水の中のASIAへ / 松任谷由実

アジアをテーマにした企画盤で、当時は12インチEPで発売された。企画盤という扱いではあるが、独特の美メロと絵画的な歌詞は荒井時代にも見られる雰囲気で(「HONG KONG NIGHT SIGHT」は正隆さんの曲のカバーらしいけどアルバムの中で全く違和感なく溶け込んでいる)、正隆さんによる安定したシティポップ風味なアレンジも素晴らしい。次回作以降もこの路線を推し進めていくことになると考えると、セールス的にも音楽的にも一段上に上がる松任谷中期の第一歩であったかもしれない。ここ数作色々と試行錯誤があっただけに久々にホッとできる、個人的にもかなり好きなアルバム。

おすすめ曲

スラバヤ通りの妹へ

ジャカルタにある骨董品(?)の店が立ち並ぶスラバヤ通りが舞台で、スラバヤ通りにいた15歳の女の子に「Rasa sayang geh」というインドネシアの童謡を通してもっと親しくなりたい、という内容。美しいメロディに絵画的な歌詞というユーミンワールドの真骨頂で、これまたインドネシアに行ったこともないのに女の子や老人、当時の変わりゆく街の風景が鮮やかに蘇るかのよう。個人的にはユーミンの中でもかなり上位に来る大名曲。

あまりの名曲っぷりの反面ほとんどベストに収録されないので(2018年に出た「ユーミンからの、恋のうた。」が唯一だったかと思う)知名度も高くないのかと思いきや、この曲を聴くくらいまでユーミンに興味がある人であれば結構上位に来る曲らしい。また後に元ちとせさんがカバーしており、そっちは独特の発声も相まってとんでもないカバーになっている。