BADモード / 宇多田ヒカル

前作のときに「これ以上深化したらそろそろついていけないかも……」って思ったら本当にその通りのアルバムが来てしまった。前作にも増してシンプルな打ち込み中心のオケで構成されており、淡々としている。盛り上がる曲はSkrillexと組んだ「Face My Fears」くらいだが、これもFuture Bassのエッセンスがあるからってだけで全体的には落ち着いている。とんでもないことになってしまったな……という気持ちではあるが、逆に言うと今の商業音楽でここまで舵を切ることができる人は他にそういないわけで、そういう意味では生まれてきた価値は確実にあったであろうアルバム。

その他特筆すべき点としては、前作の「誓い」で見せていた複雑な譜割りに更に磨きがかかり、ボーカルとオケがぴったり合っていない点が目立つ(昔からそういう側面はあったが……)。「PINK BLOOD」はどこに歌メロを置いてるのかよくわからないし、「誰にも言わない」の16ビートに3連符の歌を常に乗せ続けるところとか、「Face My Fears」では逆に16ビートの歌メロに3連符のピアノフレーズを同時に鳴らしてしまったりとか、そういうところがいちいち引っかかりポイントとなってなんとなく残ってしまう。「Fantôme」から続いているように思う「シンプルな中にどこまで耳を惹きつけるか」という命題もついにここまできたかという感触はある。ただ……もう本当にこれ以上は……って感じで一体どこまで行ってしまうんだろうか。今はただバッドエンドにならないことを願いたい。

おすすめ曲

あまりに書くことが思い当たらなくて上にほぼ書いてしまった。

誰にも言わない

「一人で生きるより 永久に傷つきたい」の飛び飛びで下降していく3連符の歌メロがあまりない感じでびっくりするが(仮に思いついてもまともに歌える人ほぼいないので)、更にそれが16ビートで展開し続ける。これ思いついてもよく実行する&歌えるな……。

Face My Fears

Skrillexとタッグを組んだ曲で、元々「誓い」のリミックスを依頼しようとしたが4/4拍子じゃないので断られて新曲を作ったとのこと。そりゃあんな変態拍子のリミックス作れるわけない。そんなわけでガチなFuture Bassパートがあるので必然的に印象には残るが、それ以外の部分も全体的には16ビートの譜割りなのに何故かピアノだけ3連符で奏でられるのが謎すぎる。でも面白いからいいや。