VIVA! 6×7 / 松任谷由実

前作の冬を感じるアルバムと対照的に今度は全体的に夏を感じるアルバム。とはいえギラギラとした暑い夏というよりは爽やかな夏といった趣で、このあたりは夏の感傷をテーマにした名曲が数多くあるユーミンだからこそだろうか。そういうこともあり、前作に引き続き、いやそれ以上にこれぞユーミンという作風となっている。

アレンジ面でも特に前半にストリングスやドラムの生音を多用しているのが特徴で、「ヨーロッパの薫り」というテーマも相まって優雅な雰囲気を醸し出している。80年代~00年代初頭くらいまで結構背伸びした印象のアルバムが続いたこともあり、全編安心して聴けるユーミンのアルバムが前作に引き続き誕生したのが感慨深い。正直これといった名曲はないこともあり全アルバムの中でもかなり印象の薄い1作ではあるんだけど、50歳を過ぎ30年も活動していると考えるとこれ以上無理に名曲を求めるのも野暮だろう。何よりもアルバムトータルで聴かせるというアルバムアーティストユーミンがしっかり戻ってきただけでも嬉しい1枚。

おすすめ曲

アルバムとしてはいいんだけどこれといった曲がこれまで以上になく何を挙げるべきか非常に迷うけど……この2曲。

Choco-language

モロに80年代アイドル歌謡っぽい曲で、ストリングスのゴージャスさや歌声に隠れてはいるがこういう作風はかなり久しぶり。「Ye Ye」「Woo Woo」の掛け声や「好きよ」の連呼等、80年代の楽曲にあったキャッチーさをほのかに感じさせることもあり、本アルバムで一番最初に印象に残った。

永遠が見える日

花火をテーマにした曲で、ユーミンが本能レベルで夏の名曲佳曲を送り出したのと同様、この曲も消えゆく花火の切なさが見事に表現されている。前作以上に横一線といった印象でこれといった曲が思い浮かばない中、唯一といっていいほど光っている私的ベストナンバー。