This Is The One / Utada

全米2ndアルバム。全体的にシンプルなオケにピアノ主体の綺麗なメロディが多くを占めており、やたらと分かりにくい印象のあった全米1stに比べると異様な程に聴きやすくなっている。さすがに直近で日本で出たアルバムよりはややクールというか全体的にリズムやシンセの音色選択周りが欧米仕様という感じはするが、逆に言うとそのくらいで「ULTRA BLUE」「HEART STATION」の次に聴いてもさほど違和感はない。歌詞についても一部やたらとセクシーな歌詞があるのは「EXODUS」にも共通する部分ではあるが、比較的分かりやすい歌詞が多く、日本のポップスターという触れ込みでデビューするのであればこちらの方が適切だったのではないかと思う。本編が10曲という、宇多田ヒカル名義含めても最小の曲数で聴きやすいところも好印象。

宇多田ヒカル名義がそうであったようにここからもう少し軸足を定めて進めていけるのではないかという期待もあるだけに、音楽活動自体がここで止まってしまって全米でのアクションもこれ以降ないのは少々残念。思えば何でこのタイミングで出たんだというのもあるけど、この時点で既に音楽活動をやめる予定で動いていて契約消化のつもりで出したのかも。活動休止のタイミングで非公認のベストアルバム出てたけど。

おすすめ曲

Taking My Money Back

付き合っていた男が金返さないわ浮気するわで当時の時間と金を返してほしいという歌詞が衝撃の楽曲。パッと聴く限りではシンプルなオケと比較的ポップ&キャッチーなメロが良い曲だなくらいにしか思っていなかったが歌詞を見て笑ってしまった。こういうセクシーかつかなり下衆い感じの歌詞は前作の「Easy Breezy」にもあったけどUSだとそういう文学作品も結構多くあるんだろうか?

Come Back To Me

今作のリード曲。繰り返しを多用したやたらと分かりやすいメロディとこれまたタイトルを繰り返すやたらと分かりやすい歌詞で普遍的なポップスを目指そうとしたことがよく分かる。アルバム内では最も好印象というか、リード曲っぽい感じ。

Me Muero

シンプルな曲が多い中では少々ジャジーというかラテン調というか、そんな雰囲気漂う曲。曲名の意味を知らずになんとなく聞き流していたが、曲名および歌詞を調べてみたらどうやら自殺したいメンヘラの女の子がテーマの曲で、こういう曲が最後に来るのは少々びっくりした。このアルバムの中だと唯一といってもいいほど前作に入ってても違和感ない曲かも。