Exodus / Utada

宇多田ヒカルさんの全米デビューアルバム。宇多田ヒカル名義とは全く異なる作風で、全体的にミニマルなオケに所々オリエンタル要素がありキャッチーな部分もあるにはあるが日本語の曲にあったポップ要素はリード曲の「Easy Breezy」にあるくらいで他の曲には皆無。この内容で14曲という宇多田ヒカル名義含めても最長の長さであるため最後まで集中力が保たない。少なくとも「日本のポップスター」という触れ込みでデビューするにはUS基準でもあまりにマニアックな内容だったのではないかと思うが、アジア人(って言っていいのか分からないけど)の全米デビューという時点でそううまくいくはずもなく、色々と制約やしがらみもあったであろうからこの点は仕方ない。

また、英詞なので全てをしっかり把握しているわけではないが、日本語の歌詞とも傾向は異なっており、「Exodus '04」「Devil Inside」のような宗教ちっくな曲や「The Workout」「Easy Breezy」「Tippy Toe」のような性的な曲は日本語の曲にはほぼない。「Animato」や「Kremlin Dusk」も日本人が理解するには難解な内容で、このあたりは英語の文学から色々と吸収している部分なのかも。

このアルバムは発売から少々遅れて2006年頃に聴いたが、一応それなりに曲は記憶したもののあまり引っかかる曲がなくそれ以降ほぼ聴くことがなかった。この度改めて聴いてみたけど全く印象は変わらず。どうしてもレコ社の思惑や本人の思考がいまいち噛み合っていないかのようなもどかしさを感じてしまう。

おすすめ曲

Devil Inside

全体的に難解なものが多いアルバムの中では比較的分かりやすい曲で、日本でもリード曲の1つとして機能した。4つ打ちの淡々なオケの中で所々目立つギターや三味線、サビでタイトル連呼する高音部分が引っかかりポイントになっていてこのあたりは単純に聴いてて気持ちいい。アルバムで一番好きな曲。

The Workout

これまたミニマルなオケでスネアやクラップの連打が面白いくらいではあるが、歌詞が日本のリスナー全員ドン引きしたのではないかと思われるくらいに性的な内容でびっくり。というかタイトルの時点で隠す気がない。よりによってその直接的な内容を歌っているところで心拍音のSEが入るのも完全にわざと。日本の感覚だとここまで直接的な内容を歌詞にするのはそうそうないと思われるが、USだと結構あるんだろうか? 普段あまり洋楽聴かないからそこらへんは分からない。

Easy Breezy

当時DSのCMとして大量OAされており日本のリード曲として機能した。曲自体はアルバム内で最も日本人受けしやすいであろうポップなメロディにR&Bっぽい作風ではあるが、これまた歌詞の内容にびっくり。端的に言うと「すぐ欧米人と付き合いたがる日本人女性」がテーマでいくら英詞とはいえよく問題にならなかったな……という感じ。MVのあからさまな欧米人が想像するアジア人女性っぽいUtadaさんの容姿も少々引いてしまうが(本人もそんなこと言ってたような)、これ本人の意思で作られた曲なんだろうか……? 深く考えなければメロディはポップだし聞きやすいし普通にいい曲だと思う。