U-miz / 松任谷由実

ミリオンを記録した大ヒットシングル「真夏の夜の夢」を収録したアルバム。シングルで出ていてかつ現在でもユーミンを代表する1曲ということもあって「真夏の夜の夢」の印象が強すぎる感はあるが、それを除けば前作「TEARS AND REASONS」に引き続き、気持ちの良いポップなメロディと丁寧なアレンジが聴ける。どうにも巷の評判が高くないように思えるが、従来のイメージと明確に異なる曲は「真夏の夜の夢」とアメリカンロックンロール風味な「Angel Cryin' X'mas」くらいで、それ以外は通常営業のそれなりに良い曲は並んでいると思う。

雄大な世界観を持つ「自由への翼」「HOZHO GOH(ホジョンゴ)」、ちょっと80年代OL路線風味な「XYZING XYZING」「11月のエイプリルフール」、従来の安定路線な「この愛にふりむいて」「July」等、大名曲はないにしてもどれも佳曲揃い。「真夏の夜の夢」の印象で聴かない方が良い1枚。

おすすめ曲

自由への翼

アルバムのスタートを切るに相応しい佳曲。飛行機の離陸前のワクワク感や雄大な大地が表現されたかのようなストリングスの伸びやかなアレンジが好印象。Bメロが一般的な4小節8小節ではなく7小節で切られるところも馳せる気持ちが現れていて曲がスッと入ってくる。

HOZHO GOH(ホジョンゴ)

USの先住民族の1つであるナバホ族をイメージした曲で、タイトルは「調和」「均衡」等の意味があるらしい。切れ目の分かりにくい構成や変拍子、ポップなメロディー、カントリー風味なアレンジが調和していて、ワールドミュージック系には外れがないなぁと改めて思う。

真夏の夜の夢

シングルが売れない(笑)ユーミンが初めて出したミリオンヒットシングル。といってもシングルが爆発的に売れるようになった91年-92年はシングル1枚も出してないんだけど、それを差し置いてもこれまで大ヒットしたといえるシングルは「あの日にかえりたい」「守ってあげたい」の60万台あたりだったのでこれは相当の大ヒットと言える。ユーミンの中でも最上位に入る有名曲なので今更説明不要ではあるが、官能的な夏を表現したこれまでの流れからするとかなり異色に思える楽曲。オケヒをかなり多用しているが、この曲に関してはバッチリはまっていて滅茶苦茶気持ちいい。

ちりめんビブラートを多用した歌唱もこれまでになかったもので、これまでの宇宙人ちっくなボーカルから占い師の老婆のような印象にガラッと変わった。以前のようなノンビブラートの伸びやかなロングトーンが出なくなってきたことからこういう歌唱に向かっていったものと思われるが、この歌唱も曲に見事にハマっていると思う。